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​コラム:未来を「試作」するーSFPは効率の先の「狂気」を
拾い上げる旅である

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<この記事はTechGALA2026に登壇した際のプレゼンを書き起こしたものです>

先日、名古屋で開催された「TechGALA」の壇上でSFプロトタイピングについてお話ししました。

「2010年頃にGoogleやインテルが始めた」「SF作家を顧問に迎える」「2050年からバックキャストする」……そんな説明を重ねるうちに、私自身の心に改めて浮かんできたのは、これは単なるビジネスメソッドではなく、私たちが忘れかけていた「欲望」を取り戻すための儀式なのだ、という実感でした。

予測という退屈、試作という冒険

多くの企業が「未来予測」に頭を悩ませています。けれど、現在の延長線上にある数年先の未来をデータで弾き出す作業は、どこか退屈です。そこに「自分たちがどうありたいか」という体温が欠けているからかもしれません。

SFプロトタイピングが面白いのは、一度、今の現実から大きくジャンプして「20XX年」という遠い地点にピンを打つところから始まるからです。

かつて『2001年宇宙の旅』が宇宙と地球のビデオ通話や、宇宙に浮かぶヒルトン・ホテルを描き、SF映画『マイノリティ・リポート』が虹彩認証システムと広告の完全パーソナライズを描いたように、フィクションは常に未来を先取りしてきました。けれど、それは彼らが「予言者」だったからではありません。「こんな世界があったら面白い、あるいは恐ろしい」という個人の想像力を、物語として「試作(プロトタイプ)」した結果なのです。

未来が「自分たちの物語」に変わる瞬間

物語の力は、時に組織の壁さえ溶かしてしまいます。現場DXを推進する「カミナシ」とのプロジェクトは、まさにそれを証明するものでした。

当時、CEOの諸岡氏は悩んでいました。心の中にある熱いビジョンが、どうしても言葉の壁に阻まれ、採用候補者や社員にまで届ききらない。「会社がどこへ向かっているのか」という地図が、共有できていなかったのです。

そこで私たちは、全社員50人と共に一度2050年まで旅をしました。そこで見つけた欠片を拾い集め、少し手前の、けれど確実に地続きの「2030年のカミナシ」を小説に仕立てたのです。

「今では、入社してくれる社員の90%が、あの小説を読んで入社を決めてくれています」

後日、諸岡さんからそう聞いた時、胸が熱くなりました。 募集要項の無機質な言葉をなぞるのではなく、物語を通じて「未来の日常」を追体験する。一人の候補者が、画面越しの小説を読み終えた瞬間、「あ、これは私の居場所だ」と直感する。そんなふうに、まだ見ぬ仲間と未来の輪郭を分かち合えたこと。それこそが、SFプロトタイピングが起こせる最も美しい奇跡なのだと思います。

遠すぎる2050年をあえて描いたからこそ、2030年という未来が「自分たちの物語」として、誰かの心に深く、静かに着地したのです。

AIには導き出せない「狂気と逸脱」

 

なぜ、今これほどまでに物語が必要とされているのか。

それは、効率や正解ならAIが導き出せる時代になったからです。データに基づいた一般解は、どこまでも正しく、そして「どこにでもある」ものになりがちです。

一方で、私たちがワークショップを通じて引き出したいのは、その企業や個人が心の奥底に秘めている「狂気と逸脱」です。「市場が求めているから」ではなく、「自分たちがどうしてもこれをやりたい」「こんな未来は嫌だ」という、純粋で、時に身勝手なまでの欲望。組織の論理によって蓋をされていた、個人の純粋な衝動。

SFプロトタイピングは、そんな「健全な狂気」を戦略へと変換するための装置です。未来を描くワークショップの席で、最初は会社に迎合した未来を描いていた社員の方が、ふとした瞬間に自分の欲望を解き放ち、ぶっ飛んだ未来像を語り出す。その瞬間の、その人の目が輝く瞬間こそが、私はたまらなく好きなのです。

 

未来は、私たちの物語の先にある

もちろん、この手法は万能ではありません。風通しが悪い組織や、結論がすでに決まっている場所では、物語は呼吸を止めてしまいます。

けれど、もしあなたが「今の延長線上の未来」に閉塞感を感じているのなら、一度2050年にジャンプしてみてほしいのです。

未来は予測するものではなく、自分たちの手で物語り、試作するもの。効率化の先にある「自分たちの物語」を見つけたとき、今この瞬間からすべきことは、驚くほどクリアに見えてくるはずです。

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